先日、JBN(全国工務店協会)・国産材委員会主催の講習会「JBN工務店だからこそ知っておきたい国産材の現状と可能性」が福岡市内で開催されました。
講師は日本の木材研究の第一人者である東京大学名誉教授の有馬孝禮先生。
じつは5年程前の有馬先生の講演DVDを見たことがあって、とても勉強になる内容でした。
今回、実際にお話を聴くことが出来るまたとないチャンス、ということで講習会に参加してきました。
3時間におよぶ講習会の内容を(私なりに)短くまとめると、国産材をつかって住宅をつくることは、地球温暖化防止や森林資源を持続していくことにつながる、ということだったと思います。
まず、地球温暖化防止という部分、これは二酸化炭素の削減ですね。
森林・木材利用による二酸化炭素削減の効果は3つあるのですが、その中のひとつ「炭素貯蔵効果」について書いてみます。(講習会では他の2つの効果「省エネルギー効果」「エネルギー代替効果」についても説明がありましたが、すべて書くと長くなりますので・・・。)
森林に植えられている一本一本の木のなかでは光合成が行われています。
スクリーンに書いてある化学反応式が光合成ですね。
大気中の二酸化炭素と地中の水から、太陽エネルギーによる光合成で、炭素化合物と酸素がつくられます。(理科の授業を思い出してみてください!)
つまり、森林には光合成で木に姿をかえた炭素C(←もともとは大気中の二酸化炭素だった)がどんどんストックされていきます。そして、この木をつかって木造住宅をつくることは、都市に炭素がストックされていくことになります。これが「炭素貯蔵効果」なんですね。
では、具体的に一棟の住宅にどれくらいの量の炭素Cがストックされているのでしょうか。
昭和住宅の事例(上の写真の現場)をもとに、ざっくり計算してみます。
木造2階建て、床面積は約37坪の建物に、約28立方メートル(m3)の木材をつかっています。そのうちの約92%が国産のスギ、ヒノキです。炭素ストックは木材の全乾重量の2分の1なので、
28(m3)×0.35×1/2=4.9(tonC) となります。
この住宅になんと約5トンの炭素Cがストックされているんですね。
※計算を簡略化するため、すべてスギとして計算しています。また、スギの全乾比重0.35としました。
ちょっと話が逸れてしまいましたが、講習会の話に戻ります。
鉄、コンクリート、プラスチックなどの原料となる鉱物、化石資源はどんなに頑張っても枯渇の速度をゆっくりにすることしかできません。これに対して、木材は伐ったあとに再び木を植えることで再生産することができます。
育てて、使う、そして育てる。
人工林では、この循環をまわしていくことが大切なのですね。
(天然林などの保護すべき森林とは役割の違いがあります。)
また、建物を長持ちさせることは森林の成長期間にゆとりをもたらすとともに、都市に長期間にわたって炭素がストックされることになります。そういう意味でも、私たち工務店には、お施主様が「いつまでも住み続けたい!」と思ってもらえる住まいをつくる責任があるということを感じました。
じつは、日本の森林には課題もあります。
日本の人工林の樹齢をみてみると40~50年が多く、若い層が極端に少ないという状況にあります。
新たに木が植えられない・・・。若者が少ない・・・。
人口減少問題と同じようなことが人工林でも起こっているんですね。
先人たちの努力によって蓄積された財産(木材資源)を生かし、次の世代に資源を更新、持続させるべき時期に来ているようです。日本には木材資源を生産するのに適した気候、国土があるのですから・・・。
では、自分たち(昭和住宅)には何が出来るのか?
それは、木材(国産材)を使って、お施主様にいつまでも愛着を持ってもらえる住まいをつくり、その魅力を発信していくことなのだと思います。(微力ながら森林の循環をまわす駆動力になりたいと思います。お施主様とともに。)
いろんなことを考えさせられる、とても有意義な講習会でした。
(他にも盛り沢山な内容でしたが、ここでは書ききれません・・・。)
そして、今回の講習会を担当されたJBN・国産材委員会の榎本委員長から紹介していただいた本が昨日届きました。
『森林飽和 国土の変貌を考える』
タイトルの意味するところは読んでみないと解りませんが、表紙に描かれた、はげ山が広がる日本の風景画が衝撃的です。(過去の日本の社会にそういう現実があったということです。)
まだ中身をパラパラッと見ただけですが、非常に興味深い内容の本です。
ゆっくり、じっくり読んでみたいと思います。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
それでは、また。
投稿者:圓佛 明